日本の「はたらき方」の歴史と変遷|終身雇用の定着から現代の多様化までを公的データで解説
当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています
この記事を読むとわかること:(読了目安:4分)
高度経済成長期から現代までの日本の雇用や働き方の変遷をたどり、かつての「当たり前」がどのように見直されてきたのかを公的データむとに客観的に理解できます。
はじめに:今の常識は、昔の非常識だったかもしれない
「一つの会社に定年まで勤め上げるのが当たり前」「転職はできるだけ避けるべき」——こうした考え方に触れたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、日本の労働市場における「当たり前」は、決して普遍的なものではなく、社会環境や経済状況に応じて大きく変化してきました。
まずは、戦後から現在に至るまでの主な変遷を整理します。
| 時代 | 主な特徴 | 雇用・働き方の転換点 |
|---|---|---|
| 高度経済成長期(1950年代〜70年代) | 終身雇用・年功序列の定着 | 新卒一括採用と長期雇用を前提とした「日本的雇用システム」の確立 |
| バブル崩壊後(1990年代〜) | 雇用システムの見直し | 日経連による雇用ポートフォリオ提唱、転職への意識変化 |
| 2000年代以降 | 雇用形態の多様化 | 労働者派遣法の改正、非正規雇用の拡大、中途採用市場の成長 |
| 2020年代 | 柔軟な働き方の普及 | 働き方改革関連法の施行、テレワークや副業・兼業の拡大 |
それぞれの時代でどのような背景があり、何が変わってきたのかを詳しく見ていきましょう。
高度経済成長期:終身雇用と年功序列の定着
戦後の高度経済成長期(1950年代半ば〜1970年代初頭)において、日本の企業社会の土台となる雇用慣行が定着しました。この時期に確立されたのが、企業別労働組合、終身雇用、年功制といういわゆる「三種の神器」です。
1958年には、アメリカの経営学者ジェームズ・アベグレンが著書『日本の経営』の中で、欧米とは異なる日本独自の長期雇用慣行を取り上げ、高い経済成長を支える合理的な仕組みとして世界的に注目されました(参照:労働政策研究・研修機構(JILPT)「雇用システムの歴史的変遷について」)。
企業は新卒一括採用で人材を一括して迎え入れ、社内教育(OJT)や定期的な配置転換を通じて長期的に育成しました。従業員側も定年まで勤め上げることで給与や役職が段階的に上がる年功処遇を受け、企業と労働者が長期的な生活保障と雇用維持を共有する「日本的雇用システム」がこの時代に完成したのです。
バブル崩壊後:転職への見方が変わり始める
1990年代初頭のバブル崩壊を契機に、長期の経済停滞期へと突入すると、従来の日本的雇用システムをそのまま維持することが難しくなりました。
1995年5月、当時の日本経営者団体連盟(現・日本牶み(現・日本的経営』と題する報告書を公表しました。ここでは、すべての従業員を一律の終身雇用とするのではなく、「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3つのグループに分けて処遇する「雇用ポートフォリオ」が提唱されました(参照:労働政策研究・研修機構(JILPT)資料シリーズNo.183)。
企業が人件費の抑制や事業再編を進めるなかで、従来の終身雇用を前提としたキャリアモデルは見直しを迫られました。それに伴い、労働者側にとっても「転職」は特別な例外やマイナスイメージではなく、自らのキャリアを再構築するための現実的な選択肢として意識され始めました。
2000年代以降:多様な雇用形態の広がり
2000年代に入ると、規制緩和や産業構造の変化に伴い、正社員以外の雇用形態が急速に拡大しました。
1999年の労働者派遣法改正による対象業務の原則自由化や、2004年の製造業務への派遣解禁などを経て、派遣社員や契約社員といった働き方が広く浸透しました。総務省統計局「労働力調査」によると、役員を除く雇用者に占める非正規雇用の割合は、1985年の16.4%(655万人)から、1995年に20.9%(1,001万人)、2000年に26.0%(1,272万人)、2005年には32.6%(1,634万人)へと急増しています。とりわけ2000年から2005年にかけては、正規雇用が256万人減少した一方、非正規雇用が360万人増加しており、この5年間で雇用構造の転換が大きく進んだことがわかります(参照:厚生労働省「平成25年版 労働経済の分析」第3節 構造変化と非正規雇用)。
同時に、民間の人材紹介サービスや転職情報サイトの普及により中途採用市場が活性化しました。「一つの企業に属し続ける」こと以外のキャリアパスが社会全体に定着していきました。
2020年代:場所や時間にとらわれない働き方へ
2020年代に入ると、制度面と社会環境の双方が重なり、働き方の時間・場所に関する自由度が飛躍的に高まりました。
政策面では、2019年4月より順次施行された「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」によって、時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇取得義務化、同一労働同一賃金が制度化されました(参照:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)。
さらに、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークやオンラインミーティングが急速に浸透しました。内閣府の調査によると、就業者のテレワーク実施率は全国で2019年12月の10.3%から2020年5月には27.7%へと急拡大し、東京都23区ではその後2021年には50%を超える水準に達するなど、オフィス出社を前提としない就労スタイルが広く定着しました(参照:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」)。
また、厚生労働省は2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、2020年9月、2022年7月に改定を重ねており、就業規則を改定して副業を認める企業も増加しています。総務省統計局「労働力調査」によると、2025年の転職者数は330万人(前年比1万人減)、転職等希望者数は1,023万人(同23万人増)となっており、転職やキャリアチェンジを前向きに検討する人は引き続き高い水準にあります(参照:総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果の要約」)。現在では、「決まった時間に決まった場所へ通い、1社のみに依存する」働き方から、個人のライフスタイルや事情に応じて柔軟に仕事を選ぶ働き方へと選択肢が広がっています。
まとめ:「当たり前」は変わり続けるもの
日本の「はたらき方」の常識は、経済状況や社会構造の変化とともに大きく姿を変えてきました。かつて絶対とされた終身雇用も、歴史を振り返れば高度成長期という特定の時代に形作られた一つの仕組みに過ぎません。現代の「当たり前」もまた、時代の変化とともに更新され続けています。過去のルールに過度に縛られず、公的な動向や客観的な事実を踏まえながら、自分自身の生活や価値観に合った働き方を柔軟に選んでいく姿勢が大切です。
次に読む記事
- 転職・キャリアにまつわる、ちょっと意外な話(意外な話をもっと知りたい方に)
- このサイトが大切にしていること(当サイトの考え方が気になる方に)
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
