「育休復帰したくない」と感じたらどうする?退職・給付金のルールと後悔しない5つの選択肢
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この記事を読むとわかること:(読了目安:17分)
「育休復帰したくない」と感じる理由の整理と、給付金・退職の正確なルール、そして「即退職」以外の5つの選択肢がわかります。
育休復帰したくないと感じるのは、あなただけじゃない
育休の終わりが近づくにつれて「職場に戻りたくない・怖い」と胸が苦しくなり、「周りは当たり前のように復帰しているのに…」と自分を責めてしまっていませんか。
そう感じるのも無理はありません。実際に、育児休業を経て退職を選ぶ人は毎年一定数います。
厚生労働省「令和5年度 雇用均等基本調査」によると、育児休業を終了して復職予定だった女性のうち、退職した割合は6.8%でした。これは、育休を取得した女性のおよそ15人に1人が復職せず退職している計算になります。「復帰しないのは自分くらいなのでは」と感じるかもしれませんが、年間で何万人ものお母さんが同じように立ち止まり、家族の状況や健康、キャリアを見つめ直した末に別の道を選んでいるのです。
「復帰したくない」の理由を、言葉にしてみる
「なんとなく復帰したくない」というモヤモヤは、漠然としたままだと、何をどうすればいいのか分かりにくいものです。まずは「何が一番引っかかっているのか」を、具体的に言葉にしてみましょう。理由として、以下のようなことが考えられます。
子どもと離れることへの寂しさと罪悪感
「こんなに愛おしい成長の瞬間を見逃したくない」「まだ話せない我が子を他人に預けるのがかわいそう」と感じるケースです。特に初めての出産の場合、子どもに対する愛情の深さや日々の変化のスピードは、産前には想像もつかなかったはずです。「仕事よりも子育てを優先したい」と感じるのは、親としてごく自然な愛情の表れです。
ワンオペ育児と仕事の両立に対する体力的な不安
パートナーの帰宅が遅い、実家が遠方で頼れないなど、日々の家事・育児の負担が自分一人に集中している状態です。ただでさえ夜間授乳や夜泣きで慢性的な睡眠不足が続いているなかで、「毎朝7時に家を出て、夕方お迎えに行き、料理をして、子どものお風呂と寝かしつけをこなす」という生活が、本当に成り立つのだろうかという不安を感じるのは無理もありません。
以前と同じパフォーマンスを出せない不安と職場の目
「産休前と同じようにテキパキ働ける自信がない」「業務のスピードや感覚を忘れてしまった」というスキル面の不安です。また、「時短勤務だと肩身が狭いのではないか」「子どもの急な発熱で当日欠勤したら同僚に嫌な顔をされるのではないか」という職場の人間関係に対するプレッシャーや、責任ある仕事から外されて雑用ばかりになる「マミートラック」への懸念も大きな要因になります。
通勤時間や長時間労働といった物理的な労働環境
自宅から勤務先まで片道1時間以上かかる、満員電車に乗らなければならない、在宅勤務の制度がない、あるいは形骸化しているといった環境面のミスマッチです。通勤時間そのものが育児の時間を圧迫するため、「せめてフルリモートや近場の職場であれば続けられるのに」と感じている方も多くいます。
心や身体が発しているSOS(産後うつ・適応障害など)
復帰のことを考えると動悸がする、涙が止まらなくなる、夜眠れない、食欲が湧かないといった症状が出ている場合、それは単なる「迷い」ではなく、心身の限界サインかもしれません。ホルモンバランスの乱れや極度の睡眠不足、環境変化へのストレスが重なり、産後うつや適応障害を発症している可能性もあります。
このような心身の症状がある場合は、キャリアや退職の決断を急ぐ前に、まずは心療内科や婦人科を受診し、休養を最優先にしてください。公的な相談窓口として、厚生労働省の「こころの耳」などでも専門窓口が案内されています。一人で抱え込まず、専門家に頼る勇気を持ってください。
復帰しないとどうなる?知っておきたい「制度とお金」のルール
復帰したくないと考えたとき、多くの方が最も心配するのが「お金と法的なペナルティ」ではないでしょうか。
「会社から訴えられるのではないか」「これまでもらった育児休業給付金を全額返金させられるのではないか」という不安があると、冷静な判断ができません。まずは客観的な制度のルールを整理しておきましょう。
1. 育休明けに復帰せず退職することは「違法」ではない
結論からお伝えすると、育休明けに職場へ復帰せず、そのまま退職することは法律上可能です。
民法第627条第1項において、期間の定めのない労働契約を結んでいる労働者は、退職の申し入れから2週間を経過することで契約を終了できると定められています。
育休は制度上「復職を前提とした休業」として設計されていますが、育休中に子どもの健康状態、保育園の落選、家庭環境の変化、心身の体調不良など、予期せぬ事情が生じることは珍しくありません。やむを得ない事情で復職を断念すること自体を禁止する法律はありません。
2. 育児休業給付金は返金になるのか?
最も多い疑問が「給付金の返還義務」です。これについては、育休に入った時点の状況によって2つのパターンに分かれます。
| 状況のパターン | 給付金の返金義務 | 今後の給付金 |
|---|---|---|
| 当初は復職予定だったが、やむを得ず退職 | 返還義務なし(すでに受給した分はそのまま手元に残る) | 退職日以降の分は支給終了 |
| 最初から退職するつもりで育休を取得した | 不正受給とみなされ、全額返還を求められる可能性あり | 支給対象外 |
育休に入った当初に復職する意思があったのであれば、その後に事情が変わって退職に至ったとしても、それまでに支給された育児休業給付金を返金する必要はありません。
ただし、退職日を迎えた翌日以降の期間については給付金は支給されなくなります。
なお、2025年4月1日の法改正により、退職日を含む支給単位期間の給付金は「退職日までの日割り計算」で支給される仕組みに改定されました。以前のように「区切りの途中で退職するとその月全体が不支給になる」という不利益は解消されています。
出典:ハローワークインターネットサービス、各種社会保険労務士事務所の解説記事を参考に確認。正確な要件は最寄りのハローワークでご確認ください。
3. 保育所の落選による「育休延長」の厳格化(2025年4月〜)
「とりあえず保育園に落ちて育休を1歳半や2歳まで延長し、その間に考えたい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、2025年4月以降、厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き」において、延長要件の確認が厳格化されています。
従来は自治体の「入所保留通知書(不承諾通知書)」の提出で延長が認められるケースが一般的でしたが、現在は「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」に加え、申込書の写しなどをハローワークへ提出し、速やかな復職の意思を持って適切に入所申し込みを行ったかが厳密に確認されます。自宅から通えない遠方の園のみを希望するなど、意図的な落選を狙う手続きは認められないため注意が必要です。
4. 退職後に発生するお金の注意点
復職せずに退職する場合、以下の2点も必ず考慮しておく必要があります。
- 社会保険料免除の終了:育休中は健康保険料や厚生年金保険料が全額免除されていますが、退職するとその免除は終了します。配偶者の扶養に入るか、自身で国民健康保険・国民年金へ切り替えて納付する必要があります。
- 失業手当(基本手当)の受給期間延長:すぐに働けない状態(育児に専念する場合など)では失業手当をすぐに受け取ることはできません。ただし、ハローワークで申請を行うことで、受給期間を本来の1年から最長4年まで延長できます。その後、再就職活動を始められる状態になった段階で受給を開始できます。
退職か復帰か、決める前に確認したいこと
退職や転職、復帰といった大きな決断を下す前に、感情だけでなく「現実的な制約と数字」をあらかじめ確認しておくことが、後悔を防ぐ最大の防波堤になります。特に以下の3点は、必ず事前にチェックしておきましょう。
1. 保育園の「在園・内定要件」を確認する
すでに保育園の内定が出ている、あるいはすでに通園が始まっている場合、「復帰せず退職すると保育園を退園になるリスク」があります。
認可保育所は「保育を必要とする事由(就労など)」に基づいて入園が認定されているため、復職を証明する「復職証明書」の提出が義務付けられている自治体がほとんどです。
- 退職した場合:原則として内定取消や退園の対象になります。ただし自治体によっては「求職活動」への切り替えが認められ、1〜3ヶ月程度の猶予期間が与えられることもあります。
- 転職する場合:転職先の就労証明書を速やかに提出すれば在園を継続できる自治体が多いですが、就労時間基準(月60時間以上など)を下回ると継続できない場合があります。
自治体によってルールは大きく異なるため、退職日や入社日を決定する前に、必ずお住まいの市区町村の保育課窓口へ匿名でも良いので相談してください。
2. 世帯の家計インパクトと生涯年収を把握しておく
「仕事を辞めたら生活が立ち行かなくなるのではないか」という漠然とした恐怖は、具体的な数字を出すことで解消できます。
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の公表データによると、1年を通じて勤務した女性の平均給料・手当は、正社員で430万円、正社員以外(パート・契約社員等)で174万円となっています。正社員を離れてパートへ移行した場合、単純計算で年間約250万円前後の収入減が生じます。
もちろん、お金のために心身を壊してしまっては本末転倒です。大事なのは、「退職した場合、夫の収入だけで毎月の固定費と生活費がまかなえるのか」「貯蓄をいくら取り崩すことになるのか」をエクセルやノートに書き出し、現実的な生活レベルを直視しておくことです。
数字がクリアになれば、「半年間は育児に専念し、1歳半になったら月8万円の在宅パートを始めよう」といった現実的なロードマップが見えてきます。
3. パートナーと「ワンオペ前提」を崩す話し合いをする
復帰への恐怖の根底に、「どうせ夫は助けてくれない」「結局すべて自分が背負い込むことになる」という諦めがあるケースは非常に多いです。
復帰するにせよ、働き方を変えるにせよ、パートナーと現状の危機感を共有することは不可欠です。
- 朝の保育園への送りはどちらが担当するか
- 子どもの急な発熱時、交互に仕事を休む体制が作れるか
- 掃除や料理を完璧にこなすのをやめ、ミールキットや家事代行、食洗機を導入できるか
「自分が頑張れば何とかなる」という思い込みを手放し、夫婦でチームとして乗り切る体制を話し合ってみてください。もしパートナーが一切の協力を拒むようであれば、それはあなたの復帰問題というより、家族全体の生活設計を見直すべきタイミングと言えます。
その上で、具体的に検討したい5つの選択肢
気持ちが追い詰められると、「無理して元の職場に戻るか、それとも即座に退職するか」の二者択一で考えてしまいがちです。
しかし、人生の選択肢は白か黒かだけではありません。間にあるグレーの選択肢も含めて視野を広げることで、心に余裕が生まれます。ここでは、検討できる5つの選択肢を整理します。
選択肢1:会社と交渉して「復職条件を調整する」
会社そのものに強い不満があるわけではなく、「今の勤務条件では両立できない」ことが問題なら、会社との交渉が最も現実的な解決策になります。
- 短時間勤務制度(時短勤務)の活用:3歳未満の子を育てる労働者に対し、法律上原則1日6時間の時短勤務が認められています。
- 柔軟な働き方の新制度:2025年10月より、3歳から小学校就学前の子を育てる社員向けに、テレワークや時差出勤、短時間勤務など複数の措置の中から企業が2つ以上を用意し、労働者が選択できる制度が事業主に義務付けられました。
- 業務内容や担当の変更:出張の多い部署から内勤部門への異動や、突発的な残業が発生しにくいルーティン業務への配置転換を復帰前面談で打診してみるのも一つの方法です。
会社の制度や上司の理解度によって実現の可否が左右されるため、会社の制度や人間関係自体には大きな不満がない人に向いています。
選択肢2:期間を決めて「いったん復帰してみる」
「3ヶ月だけ復帰して様子を見る。無理ならその時に退職する」と、あらかじめ「期限」を決めて職場に戻る方法です。
復帰前は「絶対に無理だ」と想像していても、実際に始まってみると子どもが保育園に慣れて楽しそうに過ごしたり、パートナーが想像以上に家事を分担してくれたりして、何とか生活が回るケースもあります。
また、一度復職して実績を作ることで、仮にその後退職することになっても「やれるだけのことはやった」という納得感が得られ、会社や同僚への引き継ぎもスムーズに進みやすくなります。
ただし、復帰直後の数ヶ月は特に体力的な負担が大きくなりがちです。両立できるかどうか、まずはやってみないと分からないという方に向いています。
選択肢3:育休中・復帰後に「転職活動」を進める
現職の社風や労働環境がどうしても子育てと両立できない(長時間労働が美徳、在宅勤務不可、時短社員への冷遇など)場合、環境を変えるための転職活動を検討します。
近年はフルリモート勤務が可能な企業や、時短正社員を歓迎する求人も増えています。必ずしも「退職=キャリアの断絶」ではなく、子育てに合わせた働き方(雇用形態)ができる会社へ移るという前向きな選択肢です。
ただし、転職活動には面接や書類選考の負担が伴うほか、入社直後は有給休暇が付与されない期間があるなど、一定のリスクも伴います。現職の働き方や社風に根本的な問題を感じている人に向いています。
初めて転職エージェントを使う場合は、相性の良いエージェントの選び方も事前に知っておくと安心です。
選択肢4:心身の回復を優先する「休職」
心身の不調によって復職が困難な場合は、退職ではなく会社の「私傷病休職制度」を利用できないか確認してください。
休職制度は法律上の義務ではなく会社の就業規則に準じますが、医師の診断書を提出することで一定期間の雇用が維持され、条件を満たせば健康保険から「傷病手当金」が支給されるケースもあります。心身が健康を取り戻してから、今後のキャリアをゆっくり判断できます。
雇用を維持したまま治療に専念できる一方、利用には会社の就業規則の要件を満たす必要があります。すでに心療内科への通院や診断書がある人には、特に検討する価値のある選択肢です。
選択肢5:納得した上での「退職(一時的なリセット)」
家族としっかり話し合い、家計のシミュレーションを行った上で、「今は子育てに専念する」と決めて退職することも立派な決断です。
「キャリアを捨ててしまうのではないか」と焦る必要はありません。子どもが少し大きくなり、幼稚園や小学校に入った段階でパートや契約社員、あるいは正社員として再就職する道はいくらでもあります。一度立ち止まることは、決して後退ではありません。
子どもとの時間や心身のゆとりを確保できる一方で、世帯収入は減少するため再就職に向けた準備は欠かせません。今は子育てに集中したい、家計にある程度余裕があるという人に向いています。
退職を決めた場合は、円満に退職するための伝え方のコツも参考にしてみてください。
今日からできる、疲れていても進められる小さな一歩
復帰の日が近づくと、カレンダーを見るだけで焦りを感じてしまうかもしれません。
しかし、今日この瞬間に人生を左右する大きな決断を下す必要はありません。疲れて気力が湧かないときは、以下のような「5分でできる小さなアクション」から始めてみてください。
1. 「何が嫌なのか」をノートに3つだけ書き出してみる
頭の中だけで悩んでいると、不安は雪だるま式に膨らんでいきます。
「通勤電車が苦痛」「上司の顔を思い出すとしんどい」「子どもと離れるのが寂しい」など、どんなに拙い言葉でも構いません。紙に書き出して言語化するだけで、感情と問題が切り離され、客観的に眺められるようになります。
2. 復職前面談で「伝えたい希望条件」をメモしておく
多くの企業では、復帰の1〜2ヶ月前に上司や人事との復職前面談が実施されます。
この面談は、会社の指示を一方的に聞く場ではなく、あなたの希望や現状の制約をすり合わせる交渉の場です。
- 「朝の送迎があるため、9時〜16時の時短勤務を希望したい」
- 「週に2日は在宅勤務を取り入れたい」
- 「突発的な残業が発生しにくい担当業務に配慮してほしい」
言わずに我慢して後からパンクするよりも、事前に相談することで会社側が配慮してくれる可能性は十分にあります。
3. 「どんな働き方があるのか」情報収集だけ始めてみる
「今の会社を辞めたら、もうどこにも雇ってもらえないのではないか」という思い込みは、視野を狭めてしまいます。
転職エージェントや求人サイトに登録し、世の中にどんな時短求人や在宅ワークがあるのかを眺めてみるだけでも、「いざとなったら別の選択肢もある」という安心感が生まれます。「今すぐ転職する」ためではなく、「お守り」を持つ感覚で情報を集めてみてください。
「見るだけで疲れてしまう」という方は、転職サイトを見るだけで、なんだか疲れてしまう理由もあわせてどうぞ。
あなたと家族が納得できる選択こそが、最善の答え
人は一生の時間の約3分の1を仕事に費やします。
仕事のために心身を壊したり、大切な子どもとの時間を犠牲にして涙を流し続けたりすることは、本来目指すべき人生のあり方ではないはずです。
復帰する、条件を調整する、転職する、思い切って一度退職する——どの選択肢にもそれぞれのメリットと課題があり、どれを選んでも間違いではありません。大切なのは、誰かの期待や世間の「普通」ではなく、あなた自身と家族の生活が一番穏やかに回る道を選ぶことです。
まずは一人で抱え込まず、パートナーや信頼できる相談窓口、専門機関に胸の内を話してみてください。あなたのこれからの毎日が、少しでも納得感と笑顔に満ちたものになることを心から願っています。
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